インプラント、審美補綴、顎関節症、痛くない麻酔、歯科医院での全身管理、歯科救急
どのインプラントシステムがいいの?(インプラントを行っている歯科医師向け)
2006年7月21日
最近よく多くの歯科医師からどのインプラントシステムが良いかとの質問を受けます。
これは、私も非常に悩む問題であります。
当医院では、ブローネマルクインプラントとアストラテックインプラントのどちらかを第一選択にしております。
両インプラントは、共にスェーデン製の製品であり、科学的な根拠に基ずくリサーチが行われた上で、市場にデリバリーされた製品であります。臨床成績も大変よく、一歯欠損から歯が1本もない無歯顎まで幅広い症例に使用しております。
昨日は、アストラテックインプラントを使用して左側下顎第二大臼歯部へ1本埋入手術を行いました。(骨移植と同時手術。静脈内鎮静法下に手術を施行。)
さて、本題にもどりますが、それぞれのシステムの利点欠点をご説明いたします。
ブローネマルクインプラントについて
現在のオッセオインテグレーション(骨結合)型インプラントの代表的なインプラントであります。
利点
1.高い成功率で、3.5mm、3.75mm.4,0mm、5,0mmと幅広いインプラント直径を持つバリエーションあり。
2.インプラントとアバットメント(粘膜を貫通する部品)とはバットジョイントであり、エクスターナルヘックスにより抗回転力にも拮抗し単独歯でも使用可能。
3.手術がし易い。骨の幅がない場合でもマーク4インプラント(先が少し直径が小さく、ドリリングした穴にインプラントを埋入し易い。)で埋入ができる。(この発展型が来年発売されます。)
4.アバットメントにより角度を調整できる。(17度、30度のアバットメントがある)この30度の角度付きアバットメントを使用できることが、オールオン4に使用できる。
5.エクスターナルヘックスのため、インプラントレベルの印象でもインプラント間の角度が少し付いていても、印象が可能。
6.補綴のバリエーションがなんといっても豊富。
欠点
1.パーツが多すぎる。パーツ管理が非常に大変。
2.パーツが高価。なんでこんなに高価なの?
3.1スレッドまでの骨吸収がある。(それ以上進む事はほとんどなく臨床成績には、無関係である。)
4.スターグリップドライバーが入るスレッドには、ネジの溝が切っていない。これが、アバットメントペグとにより、誤った方向にアバットメントが挿入される危険あり。また、アバットメントスクリューとインプラント内のネジ山との勘合範囲が狭い。
アストラテックインプラント
ブローネマルクインプラントを提供するノーベルバイオケア社の研究者がアストラテックへ移籍し、ブローネマルクの欠点を改善したインプラントと言われている。
利点
1.インプラントの安定性が非常に高い。骨の安定性もブローネマルク以上に高い。
2.構成パーツがシンプルで最小限で最大限の効果を狙っている。
3.ブローネマルクインプラントより、臨床成績が良い。(個人的な感想です。)
4.インプラントとアバットメントがインナースレッドで結合のため、アバットメントスクリューのゆるみがほとんどない。
5.アバットメントを外しても、歯肉に一切炎症症状がない。ただしセメントが歯肉溝に残っていない場合。
(チタン製のアバットメントの方が最も好ましい。プレパブルアバットメント)
欠点
1.直径3.5mmのインプラントを埋入するために、直径3.2mmのドリリングをしなければならない。
(ブローネマルクインプラントでは直径4.0mmのインプラントでも直径3.0ミリのドリリング径でよい。)
直径4.0mmのインプラントでは、直径3.7mmのドリルでドリリグが必要。
つまり、骨の幅が無い場合には、埋入が困難な事がある。
2.インプラントとアバットメントがインナースレッドで結合。アバットメントスクリューを緩めても、リムーバーのみでは、アバットメントをインプラント体から、外す事が困難。必ず、平行な面を内冠のアバットメントスクリュー孔と内冠面に平行な面を作っておかないと、除去できない。このとき矯正用のシンチバックプライヤーを使用する事をおすすめします。
3.インプラントレベルでの複数歯の同時印象では、インプラント内部にインナースレッドのテーパーがきついているために、インプラッションコーピングを連結した複数のインプラントとのピックアップ印象は、トレーの撤去が困難である。これにはインプラント治療初心者の歯科医師は注意が必要。
(口腔内から印象が撤去できない可能性あり。)対処としては、20度のユニアバットメントを平衡性のとれないインプラントに口腔内でセットして、その部分のみはユニアバットメントレベルで印象を取る。ただし、この場合、模型上で最終補綴が全てのインプラントがユニアバットメントで行う事を前提となり、インプラントレベルで印象したレプリカに、アバットメントセレクションを模型で行い、口腔内で使用するユニアバットメントをレプリカにセットし、仮歯を製作する。仮歯セット時に、模型上のユニアバットメントを緩ませ、口腔内に仮歯セット時に、ユニアバットメントをインプラントにねじ込み仮歯をねじ止め固定を行う。最終印象は、再度ユニアバットメントレベルで印象する必要がる。
4.ユニアバットメントは、面接触のため、補綴物の製作にはブローネマルクインプラント以上に、精度に対する高い注意力が必要である。(これが非常に大変)。熱を加えた補綴物は、パッシブフィットしているか、疑問。?(ちょっとオーバーか?)
5.インプラントとアバットメントと結合が、スイッチングプラットホーム状になっているため(このために骨吸収が押さえられているのは利点であるが)、大臼歯の補綴の際には、歯肉からの立ち上げがかなりきついカンチャーとなる。そのためセメント仮着材が縁下内に残り易い。(なんの配慮のない、合着では必ず縁下内にセメント残留があるので注意。)また、ブラックトライアングルを形成しやすい。
色々書きましたが、この2種類のインプラントなら、高い臨床成績を得られます。
どのインプラントシステムを採用しているのか、患者さまも関心を持って頂ければと思います。
ブローネマルクインプラント、アストラテックインプラントは共に、製品の高い精度と安全性を誇るすばらしいインプラントです。パーツ自体が高価ですが、これらのインプラントを採用している歯科医院を選ぶことも大切です。
患者さまから1本いくらですかとの電話での問い合わせもありますが、体に入る生体材料ですから、科学的に安全性が確認されている、世界どこの国に行っても、パーツの交換ができるインプラントを選んで頂きたいものです。
ちなみに、3iインプラントも精度が高いインプラントですよ。
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