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Doctor's BLOG

トビヒの後のSSSS

2006年10月14日

DSCN0414.jpg

Staphyloccus aureus が産生するExfoliative Toxin(ET)には、ETA,ETB,ETDがある。
皮膚の細胞間接着はデスモグレン1とデスモグレン3である。表皮に近い部分ではデスモグレン1が多く分布し、顆粒層近くではデスモグレン3が分布している。
Staphyloccus aureus が産生するExfoliative Toxin(ET)の攻撃目標は、皮膚の顆粒層までの深さにあるデスモグレン1である。
SSSSに罹患すると、このデスモグレン1が攻撃され、顆粒層で剥離が起こる。
(口腔粘膜にはデスモグレン3のみの分布により、ETの影響を受けない。つまりSSSSでは口腔内粘膜は剥離しない。)
これが、とても見た目が重篤であり、本当にこの症例に初めて当たった場合とてもショッキングである。
ましては、自分の娘が最初の症例だと。
このSSSSに罹患したStaphyloccus aureus はETA遺伝子とMRSAとは一致していることが多く、統計的にも相関関係がある。
そこで、問題なのが、トビヒの34%がMRSAであること。
そうなるとβラクタム環系抗菌剤に耐性が生じる、そうすると小児科および皮膚科の医師はテトラサイクリン系の抗菌剤を使用する事になる。
(バンコマイシンは腎毒性があるためにファーストチョイスとしては気軽に使えない。)
そこで問題となるのが、歯牙へのテトラサイクリンの着色である。
歯胚の状態で顎の中にある、永久歯の形成時期にそってラベリングが起こってしまう。
まあ、歯のホワイトニングやラミネートベニアで審美的な回復ができるが、ちょっとテトラサイクリン系抗菌剤を使用するのも躊躇してしまう。
一般の患者さまは果たしてテトラサイクリンによる歯牙の沈着のリスクを医師から説明を受けているのか疑問である。
しかし、SSSSの症状をみれば、親としてどんなくすりでも子供が良くなるのであれば、使ってもらいたいが。
少なくても私は、熟考と苦悩のうえテトラサイクリン使用を決断した。

MRSAの発生は、抗生剤の安易な使用に警鐘をならしていると感じている。
しかし、その影でIEによる亜急性心内膜炎の危険性も指摘されている。
歯ブラシだけでも菌血症が生じると言われている。
はたして、抗生剤を投与すべきか、すべきではないのか。
いつも投薬時に、MRSAのリスクが頭をよぎる。

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